もう、明日がないなら…
「懐かしいでしょ。叔父様とよく我が家に遊びにきてくれたものね」

 久しぶりに会えた嬉しさからか、晴美は上機嫌だった。しかし、そんな彼女の振る舞いに、やはり美妃は答えることが出来ないのか、曖昧な返事しか出来なかった。

 彼らが大きなガラスのテーブルに並んで座ると、晴美は運んできた白いカップを彼らの前に静かに置いた。

「早速ですが、先ほどお電話した通り、アルバムを引き取りたいのですが」

 美妃の代わりに、雅臣がふたりの間に割って入り用件を告げると、晴美は「そうだったわね」と口にしながら彼らに背を向け、背後に広がる本棚から焦げたアルバムを引っ張り出した。

「表紙は多少焦げてるけど、中は大丈夫よ」

 晴美からエンジの分厚い表紙のアルバムを受け取った美妃は、それをゆっくりとめくり始めた。

「私も見せてもらったわ。懐かしいわよね」

 笑顔でそう語りかける晴美は、美妃が記憶をなくしていることを知らないようだった。美妃は、「えぇ…」と曖昧な返事をしながら、パラパラとめくっていたが、あるページで手を止めた。
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