もう、明日がないなら…
「雅臣があなたの指輪をしまうでは、あなたの行動はGPSでバレバレだったから、そんなことする必要はなかったわね。まぁ、この人にはあなたがフランス行きの飛行機に乗れなかったことも、その理由も筒抜けだったワケだし。あたしは保険だったってことじゃないの？」

「しゃべり過ぎだ」

　美妃と佳美の間に割って入るようにして、雄哉は口を挟んだ。そして彼は着ていた焦げ茶のジャケットの内ポケットに手を突っ込むと、ガチャッと重たい音を立てながら冷たく光る拳銃を取り出していたのだ。

「雄哉さん…　私にそんな物を向けないで…」

　彼の手に握られている拳銃に目を見張りながら、美妃は胸の鼓動の激しさを悟られまいとしながらそう告げた。

「そうよ、彼女、逃げたりしないわよ。愛する人に、そんな物を向けるなんて」

　美妃に同調するように佳美もそう言うが、彼女にはまるで緊張感というものが感じられなかった。

「お前は黙ってろ」

　雄哉に冷たい口調でそう言われると、佳美は「はいはい」といい加減に返事をしながら頭の後ろで手を組み、ドアの横に寄りかかった。

「いい物を見せてあげるよ。こっちにおいで」

　雄哉はそう言うと、拳銃を握ったまま美妃の部屋から出て行った。彼女は別人になってしまった彼に違和感を感じながらも、彼の後に続いて、部屋を出たのだった。

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表紙・目次

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