もう、明日がないなら…
幸太郎はやがて、週に一度のペースが、週に二度、三度と頻繁に来店するようになった。隠しきれない感情に、彼女の心は忙しかった。会えて嬉しい、でも、苦しい…。そんなある日の夕方のことだ。
店からまだ寝ている自宅に電話がかかってきたのだ。それは、同伴の知らせだった。客は、幸太郎だった。マネージャーから時間と待ち合わせ場所を聞くと、彼女は急いで起き上がり、銭湯に向かう。この時ばかりは、眠りについたまま死ななくてよかった、と心底そう思ったほどだった。
二人は夕方の5時に地下鉄の六本木駅で待ち合わせ、麻布の焼肉店に入って行った。お腹は空いていたが、胸がいっぱいであまり食べることが出来ない彼女を見て、幸太郎は心配そうな顔をしていた。
「焼き肉は、嫌いだったかな?」
「いえ、違うの。…ごめんなさい。私…」
つい喉まで出た言葉が飛び出しそうになり、彼女は躊躇した。公私混同だと頭では解っていても、店では見せない紳士的な幸太郎を目の前にすると、どうしても自分の感情が抑えられず、恥ずかしくてついうつむいてしまうのだ。
「若い子は、寿司よりも焼き肉の方がいいって、うちの会社の若い子が言ってたから、ここにしたんだけど…。残念だな」
苦笑しながらカルビを頬張る幸太郎は、少しだけ残念そうにそう言ったのだ。
店からまだ寝ている自宅に電話がかかってきたのだ。それは、同伴の知らせだった。客は、幸太郎だった。マネージャーから時間と待ち合わせ場所を聞くと、彼女は急いで起き上がり、銭湯に向かう。この時ばかりは、眠りについたまま死ななくてよかった、と心底そう思ったほどだった。
二人は夕方の5時に地下鉄の六本木駅で待ち合わせ、麻布の焼肉店に入って行った。お腹は空いていたが、胸がいっぱいであまり食べることが出来ない彼女を見て、幸太郎は心配そうな顔をしていた。
「焼き肉は、嫌いだったかな?」
「いえ、違うの。…ごめんなさい。私…」
つい喉まで出た言葉が飛び出しそうになり、彼女は躊躇した。公私混同だと頭では解っていても、店では見せない紳士的な幸太郎を目の前にすると、どうしても自分の感情が抑えられず、恥ずかしくてついうつむいてしまうのだ。
「若い子は、寿司よりも焼き肉の方がいいって、うちの会社の若い子が言ってたから、ここにしたんだけど…。残念だな」
苦笑しながらカルビを頬張る幸太郎は、少しだけ残念そうにそう言ったのだ。