もう、明日がないなら…

　それから、彼らが深い関係になるのに時間はさほどかからなかった。初めて花恵の部屋を訪れた幸太郎は、店であんなに華やかな振る舞いを見せる彼女がこんなにも質素な暮らしをしていた事を知り、かなりの衝撃を受けていた。それでも、好きな男を前にして幸せな顔で手料理を振る舞う彼女は彼を愛おしくさせた。今までひとりで頑張って来た彼女の力になりたい。家庭がある身だというのに、彼は花恵に愛を惜しまなかった。

　それから程なくして、彼女の体調が一転する。やたら眠く、酒が不味い。そして、仕事の途中で急に気持ち悪くなり、トイレに駆け込む事が事態にまでなった。

（もしかして…）

　あまりにも顔色が悪いため、ママに帰って休むよう言われた彼女は早々と店を後にした。帰る途中、薬局に寄って買い物をしてから自宅に戻ると、早速トイレにこもり、買ってきた薬を試したのだ。

　結果は五分も経たずに表れる。彼女の予想は当たっていた。彼女は、妊娠していたのだ。