もう、明日がないなら…
「今から、そっちに行く!!」

 電話口で、彼は勢いよくそう叫ぶとガチャリと電話を切った。そして、一時間もかからず、彼は彼女の部屋のドアを叩いていた。

「会ったら、決心が揺らいじゃうのに…!!」

 この上ない独占欲で感情的になってしまう自分を抑えられる自信が彼女にはもうなかったのだ。

「花恵、開けてくれ」

 激しくドアを叩く音とともに、彼の声が壁の薄いボロアパートに響き渡っていた。

「…もうだめよ。私、今ならまたあの暮らしに戻れる。あなたの事は夢だったって思えるから…」

 ドアの向こうにいる彼に、彼女は涙まじりにそう言った。幸太郎は、感情的に頭をかきむしり、葛藤していた。

「私は、君と過ごす事で居場所のない家族の事を忘れる事が出来た。君は、私にとって一筋の光だったんだ」

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