瑠璃一味のお戯れな学園生活
そう思って学生寮の門の前まで来た龍之介は。

「ん?」

ちょうど掃き掃除をしていた喜屋武と出くわす。

いや、掃き掃除と表現したのは箒を持っていたからであって、実際にはその箒は全く動いていない。

喜屋武は箒を両手で持ったまま、心ここに在らずといった様子で棒立ちしているだけだ。

「喜屋武?」

「えっ?あ、り、龍之介さん」

呼ばれた事で喜屋武は我に返り、驚いたようにオーバルフレームの眼鏡の向こうで目を丸くする。

柔らかなシュシュで結んだ長い黒髪が、揺れた。

「お、おかえりなさい龍之介さん」

「ああ…何ボンヤリ突っ立ってんだ?」

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