瑠璃一味のお戯れな学園生活

校門を通って広い校庭を歩き、掘っ立て小屋で居眠りして碌に仕事をしていない警備員に軽く挨拶した後、琴音に連れられてシンとリィは校舎に入る。

天神学園高等部校舎。

これがかつて、父と母も学んだという母校。

建物にはあちこちに罅割れや修繕の跡があり、お世辞にも綺麗な造りではない。

だが、何だろう、この落ち着く雰囲気は。

これも佐倉の結界とやらの力なのだろうか。

不安や警戒心が自然と和らぎ、穏やかな気持ちになる。

廊下をしばらく歩いていると。

「あれは何…？」

リィが興味深げに琴音に問いかける。

壁や廊下の端に飾られている樹木の飾りつけ。

「クリスマスツリーとリースですね。この世界ではこの時期は『クリスマス』といって、ある聖人の生誕を祝う聖なる日なんですよ」

「へぇ…」

小さな鈴の付けられた可愛らしいリースを見上げ、シンの表情も綻ぶ。