悪魔なのは…
深々と頭を下げた達輝に、一宮は満足そうに微笑んだ。


「君ならきっとやってくれると思っていたよ。達輝くんには期待しているんだ」

「ありがとうございます。期待に添えるように頑張ります」


その言葉を達輝は素直に受け取った。


恐らく、通常の警察の仕事では…もっと言えば、法を多少なりとも破るかもしれない仕事だとしても、達輝は不思議と恐怖も罪悪感も何も無かった。
むしろ、燻っていた思いを遂げることが出来そうだという期待で胸が一杯であった。


「それで、その契約というのは?」

「あぁ、それは…うん、少し時間が足りないな。達輝くんは生活課だったね?」

「えぇ、そうですが?」

「時間を貰えるように言っておこう。少し外すよ」


そう言うが早いが、一宮は席を立った。そして、携帯を取り出しながら、入口の方へと向かって行った。

その背中を見送りながら、達輝はソッと伸びをした。


単に紙に名前を書くだけかと思っていたが、そうでは無いらしい。
時間が足りないということだから、もう少しややこしい手続きが必要なのだろう。


それは面倒そうだ。


思わず溜め息を飲み込んだ。


それにしても、警察内部の組織として成り立っておきながら、その実情を知るものは限られているとは…一体、どういう仕事なのだろうか。
そもそもの成り立ちも気になる。

一瞬、犯罪者を秘密裏に抹消するのかとも思ったが、いくら何でもそんな暗殺紛いのことをする部署が成り立つとは思えなかったため、その考えは捨てた。

考えても分からないため、達輝は大人しく一宮の話を待つことにした。

< 12 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop