悪魔なのは…
「法律で裁かれない?と言うと、つまり…」

「つまり、秘密裏に裁かれる、ってこと」


ラグノがヘラッと笑った。
だが、その内容に達輝は当然笑顔を作れず、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「…暗殺、でもされるんですか?」

「それは教えられねーなー」

「こら、ラグノ、茶化すなよ」

「茶化してねーよ、事実だろ」

「まぁ、それは確かに。…うーん、何て言うかな。人間社会の、所謂、法社会とはまた別個の世界に入る、と思ってくれていいよ」

「…はぁ」


回りくどく説明するのは、まだ契約を結んでいないからだろうか。

達輝は慎重にならざるを得なかった。


「例えば、の話ですけど…」

「うん?何?」

「自分が思う正義に反したことが成されていて、それを告発すると、どうなりますか?」

「…なるほど。良い質問だな。だけど…うん、それは一宮さんから言った方がいいかな?」


そう言って、ラルクは一宮に視線を向けた。
その視線を受けた一宮は、少し瞼を閉じた。そして、何かを思案するように一拍置いて、瞼を開いた。


「そうだね。それは、通常の場合であれば、賞賛に当たる場合がある。公務員であれ、何であれ、だ。だが、ここの場合はかなり特殊だ。先ず、君がそう叫んだとしても…信じる者はいないだろう」

「俺個人に信用がない、ってことですか?」

「いやいや、そうじゃない。どんなに有名な者が言ったとしても、信じる者はいないだろうな。それぐらい突拍子もないことだ。そして、ここの契約は絶対だ。裏切ることは出来ない…たとえ、君の正義に反したとしても、だ」


一宮は、何処か困った様子で苦笑した。
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