悪魔なのは…
父親が生前来ていたと聞き、達輝は物珍しそうに辺りを見回した。
外見通り、レトロな雰囲気のお店で、室内にはレコードが置いてあり、クラシックが流れていた。時計もアンティーク調のもので、振り子がゆらゆらと揺れていた。
小物品一つとっても、マスターの拘りが見て取れた。
店内の様子に興味津々な達輝に、一宮は笑みを浮かべた。
「ここは隠れ家みたいなものでね、よく
息抜きにお邪魔させてもらっていたんだよ」
「確かに落ち着いた雰囲気で、とてもいい所ですね」
「だろう?気に入って貰えて良かったよ」
達輝が微笑みながら言うと、一宮は、満足そうに頷いた。
「お待ちどうさま。ナポリタンとコーヒーのセットですよ」
マスターがお盆に載せて、料理を運んで来た。トマトソースの匂いと、コーヒーの香りが辺りに広がり、更に、お腹を空かせた。
一宮に勧められ、達輝はナポリタンに手を伸ばした。
期待した通り、とても美味しい。
「…うまい!」
「それは良かった。ここのナポリタンは本当に美味しいんだよ」
満足気に頷き、自身もナポリタンを口に運んだ。
しばらく、他愛ない会話をしながら、食事を楽しんだ。