悪魔なのは…
お皿も下げられ、それと同時にマスターが、コーヒーのお代わりを注いでくれた。

マスターが離れた頃を見計らってか、一宮が話し掛けた。


「君は、今の仕事が楽しいかね?」


その台詞に、達輝は一宮の顔をジッと見つめた。
真意を読み取ろうとしたが、彼のポーカーフェイスからは何も読み取れず、慎重に答えることにした。


「…そうですね…楽しいかと聞かれると、難しいですね。周りの人たちは親切な人が多いですから、人には恵まれてると思います。ただ…俺は、刑事志望でしたので。そこは、少し残念ですが」

「なるほど…。何故、刑事を?やはり、父親の件でかね?」

「…ッ…」


思わず、息を呑んだ。


その台詞を、よりにもよって、目の前の人物から聞くことになるとは思わなかった。

無意識に、達輝は一宮に冷めた視線を向けていた。
ゾクリとするような、そんな冷たい瞳で…。


「…当然でしょう。俺は、俺みたいな人を増やしたくないんです。父親みたいに無念な想いを持つことになる人を出したくないんです。そのためには、刑事になるしかないじゃないですか」


吐き捨てるかのように言った達輝に、一宮は気分を害するでもなく、ただ一つ頷いた。
まるで、彼がそう答えることを予測していたかのように…。
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