君想歌
何年ぶりかな。
意外に指は覚えてる。

上手く弾けてる。


ほら。
俺が弾くのを見て
晋作は苦い顔をしている。


だって俺のほうが
上手いからね。


それを認めたのかな。


「おい……。
まだ付き合ってんのか
その……女と」


控えめに聞かれた質問。


ピタリと手を止める。


「文句ある?」

突き放すような言い方をすれば。

高杉は表情を固くする。


まるで干渉するな、とでも
言っている吉田の目。


「いや、お前がそこまでな?
思い入れる女。
今まで居なかっただろ?
関係なしで話してみてぇと
思っただけだ」


「で?」


それだけだ、と高杉は俺から
目線を外した。


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