君想歌
悠は治療を終えると、
ニコリと笑った。


「歩き回ったら駄目ですよ?
二、三日は様子を見に来ます」


部屋から足音が通り過ぎると
後ろから溜め息が聞こえた。


「和泉。ごめん」


「なっなにが?」


いきなりの謝罪に上擦った声で
栄太郎に問う。


「俺が迎えに行けば良かった」


ぽつりと呟かれた言葉に
小さく笑う。

栄太郎は眉を寄せ
笑った和泉を睨む。


「新撰組に入っている以上。
危険は常に隣り合わせ。
それなりの覚悟を持て。
沖田隊長に言われてるから」


「だから和泉が怪我をしても
いいって言うの?」


その答え改めなよ、
そんな眼差しで和泉を見つめる
栄太郎の手をそっと握る。


< 162 / 633 >

この作品をシェア

pagetop