君想歌
「違うよ。
栄太郎が気に病む事じゃない、
そう言いたいだけだよ」



表向きには笑顔を浮かべた
吉田だが内心は穏やかでは
無かった。


自分が和泉と交流があるから、
狙われた。


紛れもない事実だ。


晋作に言われた通り、
和泉の気持ちを尊重したい。


だがもし、また狙われたら?



なおも浮かない顔をしている
吉田に和泉は手をほどくと
布団に戻った。


栄太郎だって思うことが
あるのだろう。


軽い目眩のする頭は、
どうやら血が足りないらしい。

いつもなら自然と言葉が
口につくが今は何も浮かばない。


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