君想歌
対する和泉も布団を引き上げ
考えていた。


栄太郎に頼りすぎなんじゃ
ないのか?


頻繁に会うのを栄太郎は
嫌がっているわけではない。


だが今思えば、それが栄太郎の
迷惑になっていたんじゃ?


「……わからない」

聞こえないくらいの声で
和泉が言うと、栄太郎が
突然口を開く。

「うん。やっぱり……」


すっと伸びた吉田の手は
顔を隠すように置かれた
和泉の手を包む。


「和泉は俺が居ないと駄目で、
俺も和泉が居ないと駄目」


手放すことを少しでも考えた
自分が怖い。


遠慮するように離された和泉の
温もりが消えた手は心に
虚無感を感じさせる。


「俺が守るから」


桂さんなんかに俺たちが
崩されるなんて癪だしね。


手から伝わる少し高めの体温が
俺を安心させる。


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