君想歌
目から溢れた涙は痛みのものか
はたまた感情によるものか。


恐らくは両方だろう。


「くくっ。泣き虫」


栄太郎は目を細めて小さく笑い
すっと人差し指で雫を拭った。

「栄太郎も休みなよ。
酷い顔してる」

目の下を指差した和泉は
申し訳なさそうに眉を下げる。


和泉が目を覚ますまで
一刻も寝ていない。

思い出したように
ふわぁっと一つ欠伸をした
栄太郎は和泉の隣に潜り込む。

「ちょっ!?
足蹴らないでよ?」

「じゃあ俺の腹に
膝蹴りいれないでよ」


和泉の身体を腕の中に抱くと
思考は微睡みに落ちていった。


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