君想歌
ごめんごめん、と
軽く謝罪をした直後
和泉の表情が固くなる。

横を歩く沖田も同じ。


ちらりと沖田に目線を送ると
視線を受けて頷いた。

それを見ると刀に結わえた
鈴をおもむろに触った。


ちりん。


澄んだ音を立てたそれは


敵がいます。
警戒してください。

という和泉なりの
合図なのだ。


「二十三人」


沖田と共に立ち止まった
和泉はぽつりと呟いた。


足音と僅かに漏れた気配から
的確な人数を割り出す。


「新選組の沖田と瀬戸だな?」


止めなよ。
命を無駄にするのは。

斬らなくちゃ、ならないんだ。

何にも悪いことしてない。

……でも新選組としての
私達に刀を向けたんだ。


刀を抜いて突っ込んで来た
浪士に目にも止まらぬ速さで
和泉も抜刀した。


まだ斬り合いを経験していない
隊士たちの方が多い。

だから隊士を一番隊を
守らなければならない。



でも、いつまで経っても
慣れない。

人の身体を斬る感覚に
自分の意思を抑えつけ
また血を浴びた。

< 17 / 633 >

この作品をシェア

pagetop