君想歌
襖の前で微動だにせずに
正座をするのは斎藤一。


おぅ……。
退路が塞がれた。


副長命令に忠実な一くんが
仕事をサボるなんて天地が
引っくり返ってもありえない。

「頼むぞ」

「承知」


部屋の中に押し込まれると
土方は襖を閉めた。


「一く〜ん。見逃し「ならぬ」


言い終わらない内に遮るように
斎藤が言葉を被せ和泉は
口元を引きつらせた。



「総司が、心配していた。
何故、瀬戸が襲われなければ
ならぬのかと。
自分が狙われれば良かったのに
としきりに口にしていた。
なにか一言言ってやってくれ」


斎藤が珍しく表情に出してまで
言うことだ。

総司には謝らないと。


だが話すにしても。
どう部屋から出ろと?


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