君想歌
「総司は。
甘味を買ってから直接ここに
来るようだ。
……戻ってきたようだな」


悩む必要は無用だったらしい。
和泉の疑問に答えるように
斎藤が口を開いた。


すっと斎藤が腰を上げると
隠しもしない足音が遠くから
聞こえてくる。



「では俺は茶を持ってくる。
動くなよ」


斎藤の視線は長い袴で隠された
包帯が巻かれた足首に
注がれる。

「分かりました。
お願いします」

微笑みを浮かべた和泉に
若干目元を緩めると部屋から
出ていった。


「和泉!!」


突風のように斎藤と
入れ代わるように部屋に
入ってきた沖田は勢いのまま
和泉に飛び付く。


「大丈夫なんですか!?」


心配そうに眉を下げて
ちょこんと首を傾げると
沖田の前髪が揺れる。


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