君想歌
――長州藩邸

ピリピリした雰囲気が
部屋に満ちる。


向かい合うのは桂と吉田。


後ろに控えるのは才原。


既に鯉口がきられた刀に
手を掛けているのは、吉田だ。


睨みあって、どちらも
譲らない。


「ねぇ……。
いい加減にしてよ」


表情も変えず殺気だけを全開に
して吉田は桂の目も見ずに
言った。


「何がかな?」


あくまで知らぬ存ぜぬを貫き
通す桂に切れそうになる自分を
どうにかして押さえる。


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