君想歌
辺りに空いた銚子が幾らか
転がり、和泉の手が止まる。


胡座をかいた膝の上に乗せた
和泉の身体が、ふにゃりと
前に崩れる。


「わっ!!」

「……相当飲んだな」


最早疑問系でも無い土方の声。

「もう寝るぞ」

膳に突っ込みかけた和泉を
片手で受け止めた土方は
上座に戻っていく。


沖田は安堵して大きく息をつき
膝の上に和泉の頭を乗せた。


酒のせいで染まった頬と
上がった体温を着物越しに
感じ鼓動が速くなる。


あぁ。
おかしくなりそうです。


こんなにも近くにあるのに。


他の男を好いているのが
気に食わない。


嫉妬だって分かってます。


でも僕の方が一緒に居た時間は
長いのに、何で?


そんな疑問は日々大きく
なるだけなんです。


< 212 / 633 >

この作品をシェア

pagetop