君想歌
そこまで考えると
心を落ち着けるように
目を閉じる。


駄目です。


和泉が困ります。


気持ちが落ち着くと冷静に
物事を考えられるようにも
なる。


膝の上で動いていたはずの
和泉は静かになっていた。

「寝ましたね」


和泉の顔にかかった前髪を
避ければ、くすぐったかった
のか身体をよじる。


「やけ酒して寝落ちたんかいな」
「山崎さんも宴会に?」


後ろから聞こえた声だけで
誰だが分かる。


肩越しに振り向けば手には
白い包帯が持たれている。


「ちゃうわ。
姉ちゃんの包帯変えるために
来ただけや。
本当子供みたいなやっちゃ」


「あはは」


着物に隠された包帯を解こうと
手を伸ばした山崎はふと
動きを止めた。


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