君想歌
「姉ちゃんが正直に言う訳が
無いやないか。
怪我したって情報が屯所に
舞い込んだ時の慌てようも
誰かしらに聞いとるはずや」


多少動いても緩まないように
包帯を巻き終わると沖田と
ようやく目を合わせた。


「沖田はんには迷惑、いや心配
掛けたくなかったんやろ。
その気持ちを汲み取って
あげるのもええんやないか?」


押し入れに入れてあった
布団を和泉に掛けると
山崎は足音もたてずに
部屋から出ていった。



「……そこに居るんでしょ?
土方さん。バレバレです」


山崎と話し出してから
くっついてきた気配に
声をかけた。


襖の陰から姿を見せた土方は
そのまま廊下に腰を下ろした。

「わざとだよ。
ばーか」


右手に煙管を持った土方の隣に
沖田は座る。


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