君想歌
「少し早いけど帰るね。
邪魔になっちゃ……あわわ」


腰を上げようとした和泉の腕を
吉田が引っ張り前に体勢が
崩れる。


「駄〜目。
時間まで居なさい」


「だって!!寝ちゃいそうだもん」

仕事遅れたら怒られる……と
眉を下げる和泉にすんなりと
手の力を緩める。


「じゃあ代わりに」


何が?と聞く前に吉田の方へと
引っ張られて腕を押さえられる。


紅が乗せられた唇に
吉田の唇が重なった。


帰り際に吉田に抱きしめられ
唇を重ねるのは、いつもの事。

最初は驚くものの慣れれば
問題は無くなる。


「うん。ごちそうさま」


唇を重ね薄くなった紅は
吉田が人差し指で拭う。


「また付けてあげる。
よく似合ってたよ。
また明日」


するりと名残惜しそうに手を
離した吉田は左手を振った。


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