君想歌
赤くなった頬を隠すように
全速力で旅籠から駆け出す。


恥ずかしい!!


あんな綺麗な顔を間近に
口付けなんて恥ずかし過ぎる。

余裕そうに上げられた口元とか。

細められた目元とか。



「くそー!!
カッコよすぎなんだよ〜!!」



さっきのことを思い出し、
激しく頭を左右に振る。


「和泉さん。
変な目で見られてますからね」


「うわっ」


痛い人を見るような目で和泉に
容赦無い視線を送るのは、
悠である。


塀にもたれた彼は手に野菜を
抱えていた。

買い物帰りか。


「今から仕事ですか?
怪我には気を付けて。
無理は禁物ですから」


特に貴女の恋仲さんは心配性
ですから、と悠は笑う。



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