君想歌
ころんっと寝転がったまま
和泉は畳から起き上がらない。

吉田が隣に身体を並べれば
興味津々の表情で彼の髪を
触り始める。


伸ばされた腕を避けずに居れば
抱き寄せられる。


「もしかして栄太郎ってさ」

「……ん?」


和泉の問い掛けにどこか
眠たそうに吉田は答える。


「意外と甘えん坊さん?」


「……和泉の前だけね。
でも和泉だって言えない」


結論だけ言えば。

両者ともが普段見せない顔を
ここでは自然に見せている。


……ということだ。


「最近大変?」


ふと吉田の指が目の下を撫で
擽ったさに目を閉じる。

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