君想歌
*穏*
あれから五日後。

降って沸いたように現れた
非番の日の夕方。


和泉は珍しく女の格好をして
屯所を裏口から町へ出た。


待ち合わせ場所は旅籠では無く鴨川で。


言わずとも。

和泉たちが出会った場所である。


紅を引いた唇を気にしながら
待ち合わせ場所へと急いだ。


「わー……。ごめん」


和泉より先に来ていた吉田に
謝る。


そんな事全然気にしていない、
そう言うと吉田は和泉の手を
取った。


もう暗くなりつつある道を
手を繋いで仲良く歩く二人を
道行く人は皆視線を向ける。

栄太郎は女の視線を集め、
和泉は男の視線を集め。


「栄太郎、ずるい」

「和泉、ずるい」


同時に口を尖らせ言った二人は
顔を見合せ吹き出した。


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