君想歌
吉田はそんな和泉を片肘をつき
上から眺める。


「誰にでも欠点くらいあるよ。
ところで今日は巡察は平気?」


昨日は随分と急いで帰った
みたいだから。

あまり引き留めるのも悪いしね。

そう続ける吉田に首を振る。


「今日から三日間、非番で休み。
大きな事でも無い限り、
私が出る幕は無いよ。
でも門限は守らないと駄目。
だから行動は制限されるけど」

「そっか。
今日はゆっくり出来るんだ」

にこりと笑った吉田につられ
和泉も笑う。

「栄太郎はまた何で私なんかと?」

「それは会ったばかりなのに
親密な関係になったこと?
それとも新選組のキミと
こうやって話してること?」

「両方」

欲張りだけど。
どちらも知りたい。

栄太郎は組の情報を知るために
私と接触してる訳じゃない。

だけど……。


「和泉。
今、失礼なこと考えてたでしょ。
まぁいいや答えは一つ。
好きだから」


こんな偽りの言葉、何度も
男から聞いて慣れてたはず。


聞いて、流して。


栄太郎が言った言葉は流れず
頭に残り恥ずかしくなって
突っ伏した。


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