君想歌
ひんやりとした冷たい感覚に
沖田の意識は浮上する。

不思議に思い手を伸ばせば額に
濡れた手拭いが置かれている。

布団の傍には水が満たされた桶。


誰が、と視線を巡らせば
見慣れた姿があった。




書物を捲る彼女は沖田の視線に
ゆっくり顔を上げた。


「……大丈夫?」

パタンと書物を閉じ和泉は
立ち上がる。


「あわわ……」

伸ばされた手に慌てている
沖田に吹き出した。

「下がったね」


安心したように息を吐くと
沖田の右手を指した。


「ずっと握ってるけど……
嫌じゃないの?」

「うわぁぁあ!!ごごごめんなさい」


無意識に掴んでいた和泉の手に
気付いた沖田は真っ赤になる。

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