君想歌
土方に逆らうことはしない。


素直に木刀を壁に引っ掛けると
乱れた着物を直す。


「水被って来い。
それから散歩だ」


土方の突発的な提案。


「え!?あ…ちょっと」

和泉は土方に言葉を返した
その頃には既に土方の姿は
目の前から消えていた。





「遅ェ」

「唐突すぎでしょ」


門にもたれた土方を遠巻きに
何事かと隊士らが覗いている。

門前にある土方と和泉の姿が
揃うのは確かに珍しい。


「迷子になるなよ」

歩き始めた土方は和泉に一言
そう言った。

「ならない!!」

間髪いれずに叫んだ和泉を
馬鹿にしたように鼻で笑う。


お決まりのように。

頭にセンが降ってきたのは
言うまでも無いだろう。


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