君想歌
土方、和泉とセン。

三人は昼下がりの川沿いを
歩いていく。


「久しぶりだな。
こうやって散歩するの」


おもむろに呟いた土方の言葉に
過去を思い出す。


屯所に来た当初は土方に
よく連れ出されていた。


「そうだね」


後ろを歩く和泉を見て
土方は速度を緩めた。


「降りるぞ」

「うわっ」


がしっと腕を掴まれ影になる
橋の下に降りた。


座った土方と少し間を開け
和泉は草の上に座った。


「俺が知らないと思ったか」

「…………?」


土方の言葉の意味が分からない。


「吉田稔麿、お前の男だよな」


土方の言葉に立ち上がりかける。


だが土方の腕が帯を掴み
動きを抑制する。


「最後まで聞け!!
屯所じゃ話せねぇから
俺は此処に連れて来たんだ」


きゅっと手を握りしめ俯いた
和泉に土方は頭に手を伸ばす。


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