君想歌
団子を片手に持って沖田は
屯所の門をくぐった。

同時に中から走ってきた
和泉とすれ違う。

「わわっ!!」

驚いて後ずさる沖田を一度も
見ようとせずに走り去る。


「何ですかー?もう」


ぷうっと頬を膨らませ沖田は
ぱくりと団子を飲み込むと
土方を弄りに向かった。




適当に走りここが
何処だか分からない。

「迷子じゃない?」

「そうだね」

後ろから不意に現れた気配に
腰に手をやるが、

「…………」

たっぷり三呼吸分くらい
間が空く。

あれ。
刀、忘れた。

「俺さ、和泉を甘味屋の前から

追ってたんだけど。
腰に刀無いからてっきり浪士に
追い掛けられてるかと思いきや
違うみたいだし」


呆れた、と付け加えた吉田は
脇差しを引き抜くと和泉の腰に
差し直し。

「疲れた」

と一言。

ここが何処か全く分からないが
ひとまず休むとしよう。



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