君想歌
軽く顔をうつ向かせた和泉は
凛とした声で高杉に言った。


「私は稔麿と恋仲になったことは
後悔してない。
笑顔も温もりも忘れない。
もちろん一生。
稔麿との約束も守るから!!」


和泉の様子に驚いたように
高杉は目を見張った。


「大丈夫、稔麿付いてるから」


懐刀をぽんと叩き、ふわりと
和泉は笑う。


「じゃあね。
もう一直線だから」


くるりと背を向けて
勢いよく走り始めた。


「あ!!おいっ待てよ!!」


和泉は軽く手を振っただけで
走り去ってしまう。


一人残された高杉は呆れた様に
笑って藩邸へと足を向けた。


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