君想歌
詳しい事情を聞かされないまま
和泉は連れ去られたと言うのに。


律儀に境内で帰りを待っていた
土方に多少驚いた。


「あの男は?」


送るって言ってたじゃねぇか、と
見えない姿に土方は不満を
露にする。


「途中で置いてきた」

和泉の返事に数秒固まり
額を押さえた。


ここに連れてきては争いに
なるのは必須。

ましてや高杉晋作が居ると
分かれば斬り合いになる。

「てめぇは……自覚があんのか」

腰に刀すら差してない和泉を
土方は睨む。

「常に危機感を持てと……」


説教じみた言葉を遮り
話題を反らす。


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