君想歌
吉田と話した事を思い出し
水面を見つめる。


涙が出そうになり慌てて
目を反らした和泉の袖が
控え目に引かれた。


「お姉ちゃん」

「ん?」


桃色の着物が目に入り
目線を上げた。


おかっぱ頭の女の子が
和泉の隣に立っていた。


「和泉お姉ちゃんでしょ」

「え?」


探し物を見つけた時のように
嬉しそうな顔をしている。


大きな瞳で笑い掛けてくる
女の子に名を呼ばれ首を傾げた。


初対面の彼女が何故?


「栄兄ちゃんに聞いた。
恋仲なんでしょ?」

「っ!!」


一気に顔が赤くなった和泉は
瞬時に理解した。


和泉が来る前に川に来て稔麿は
遊び相手をしていたのだろう。

そして和泉のことを話した。



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