君想歌
そっか、と頷くと帯に差した
玉簪を抜き取る。


「綾が栄兄ちゃんに着いて行って
買った簪!!」


小間物屋に入り決めたが
買う勇気は無く。


結局綾に頼み込んだらしい。


「あはは、本当?まったく」


困る姿が目に浮かぶ。


毎日、まだ陽も昇らぬ時刻に
稔麿のお墓に手を合わせる。


女の格好で、だ。


今日のご飯が美味しかったとか
どうでも良い話をして帰る。


不思議と道で襲われないのは
やはり稔麿が守ってくれて
いるからだろうか?


なんて最近思ってしまう。


.
< 554 / 633 >

この作品をシェア

pagetop