君想歌
和泉が離してくれないと知ると
膝の上に丸まった。


ちり、と腰に差した刀についた鈴が鳴る。


飾り物になっている刀だが
手放すことは出来ない。


固く結ばれた結び目を
爪を立てほどく。


紐から鈴を抜き取り
センの首に手を伸ばした。


するり、と吉田の髪紐を
首から取る。


「セン、離して」


口で髪紐を取られまいと噛む
センの頭を撫でる。


手のひらに落とされた髪紐に
その鈴を通す。

「居なくなったら困るから」

再度結わえられた首輪には
色褪せた鈴が鈍く光る。


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