君想歌
桜色の着物を身にまとい
総司と似た顔立ちのミツ。


「驚かせてしまい、すいません。
沖田総司の姉、ミツです」

下駄を揃えた和泉にミツは
手慣れた動作で頭を下げる。


「瀬戸和泉です」


あえて副長に対しての扱い
驚きました、とは言わない。

考えるだけ後が恐ろしい。


和泉が簡潔に自己紹介をすると
ミツは口元を押さえ小さく笑う。


「そう固くならないで。
今回の上京は和泉ちゃんに
会いに来るのが目的だったの」


ミツは和泉の隣を歩きつつ
京に来た目的を話した。


「何故、ですか?」

「秘密よ」

ミツは柔らかく微笑み
若干不満そうな和泉に言う。


「一つは女友達を増やすためよ」

ちょん、と頬をつつくと
ミツは楽しそうに笑った。


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