君想歌
自分から俺の背中に手を回して
胸元に顔を隠してるから。

和泉がどんな顔をしているか
全然分からない。


「俺の戯れ言だと思ってさ。
聞いてくれない?」


昔言われた言葉。

なかなか素直になれない自分に
松陰先生が教えてくれた言葉。

「隠しごとはね。

隠しきれる小さな物。
時が過ぎれば過ぎるほどに
大きくなってしまう物。
その二つがあるんだって。

隠しきれる物はいつか
忘れてしまうかもしれない。

後者は弱い自分を悟られまいと
自分を抑えてしまう。

それは限界があるんだって」


言っちゃいなよ?

言い出せるまで
背は押してあげる。

戸惑っても良いから。
泣いても良いから。

俺しか受け止められる人は
居ないでしょ?


「俺は、和泉が笑うなら
隣で笑ってあげる。

泣いたら泣き止むまで
抱きしめてあげる。

困った時には答えはあげない。
けど背は押してあげる」


だから。
頼ってくれない?


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