君想歌
頭の中では結論は出ている。


栄太郎に言ってしまえ、と。


しかし意に反して口は動かず
頭は混乱状態に陥る。


――まず何から言えばいい?


困ったように早速自分を
見上げた和泉にニコリと笑う。


「とりあえずは落ち着きなよ。
一番不安に思っているのは何?」


まず、それから片付けよう。


「……栄太郎に要らないって
言われること」

「うん。
それは絶対に無い。大丈夫」


ぽんぽんと和泉の頭を
優しく吉田は叩く。


「栄太郎と会えないのも嫌。
栄太郎の前では素だから」


「嬉しいね。それ」

総司や土方にもどこか一線を
引いた付き合いかたをしている。

彼らの前で。

まず弱い部分は見せない。


見せるならそれは栄太郎、
一人だけで充分だ。


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