君想歌
前に回された腕を拒むこと無く
和泉は話し出す。


一度口から溢れ出した言葉は
もう止まらない。


「前に長州に親が殺されたって
言ってたでしょ?」


吉田は相槌を打つと先を促す。


「何で親が殺されたか。
無差別に殺られたわけじゃない。
父親は長州の情報屋。
私が産まれて普通の生活に
戻ろうとしたけど。
許されるはずがない。
だから始末された」



ぱっと吉田の頭の中に浮かんだ
数年前の出来事。

そうだ……。

長州が、実際には桂さんが
抱えてた情報屋が子供が産まれ
失踪して。

ようやく探し出したら京で
普通の生活をしていて――…。



「誰も知らないと思う。
私が裏で調べてこれだけしか
情報が分からなかったから」


< 74 / 633 >

この作品をシェア

pagetop