君想歌
覚えているはずがない。


だって両親が目の前で殺されて。


あんな状況で助けてくれた人を
覚えているはずもない。


いくら和泉が大人に近い
年齢であっても。



だから俺は否定するよ。


「違うよ」


ってね。


「そっか」

然程気にする風でも無く
あっさりと頷いた。


屯所に帰ったら真っ先に
あの時の着物を捨てよう。


もう過去には縛られなくても
いいんだから。


秋風は冷たい。

けれど心は温かかった。


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