君想歌
着物は自分で決められず
君菊さんに選んでもらった。


淡い青色の布地に控え目に
蝶が飛んでいる。


絶対にこれは着ることが
無いだろう着物。


似合わないよ……。


君菊さんは私が元々髪も長く、
肌も色白だと言って。

簡単に髪を結い上げてもらい
化粧も紅をひいただけ。


似合ってる、なんて言葉。


お世辞だよね。


奥座敷の襖を君菊が叩くと、
和泉も部屋に入った。



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