君想歌
先に飲み始めていた幹部一斉が
此方に顔を向ける。


「お待っとさんでした」


君菊は一礼すると部屋を
出ていく。


膝の上で両手を握り締め
和泉は俯いたままで固まる。


「顔上げろ」


片膝をついた土方が和泉の顔を
右手で上げさせる。


「ふっ……。化けたな」


くっくっと土方は綺麗だと笑う。


「お世辞なんていらない」


「……いっ和泉?」

そっぽ向いた和泉を総司が
驚いた顔をして見ている。


「綺麗です!!」

持っていた箸を放り投げ
和泉に飛びつく


「わわっ…」

「阿呆」

……前に土方に
腕を掴まれて抑えられる。


「折角の着物が崩れる。
酌でもしてもらえ」


ずるい!
総司だけか?


色々な声が飛び交う。


「にっ似合う?」


和泉は傍らで小さく
沖田に訊ねる。


「…綺麗すぎです。
なんか普通に喋れません」


そこらの芸子よりも
美しくなった和泉に沖田は
ドキドキしっぱなしだ。

どうしてくれるんですか!!

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