君想歌
幾らか酌の相手で和泉も
酒を飲み。


和泉は酒に強いとも言えない。


酔いざましにとほんの少し
上気した顔で部屋の外に出る。


「あれぇ〜嬢ちゃん、
見かけない顔だね〜」


「お兄さんたちと遊ばない〜?」


離れていても酒の強い香りに
目眩がする。

聞いたことのある軽い言葉で
絡まれる。

「ほら遊ぼう〜」

身体は素直に動かずに
酔っぱらいに腕を掴まれる。


「止めてください」


「お姉さん〜」


強い力で部屋へと強制的に
引きずられていく。

やはり女の力では男には
かなわない。


それに着物だと体術も使えない。

懐刀も持っていない。



< 85 / 633 >

この作品をシェア

pagetop