君想歌
*斎藤一*


部屋を見回すと和泉の姿が
見当たらない。


何処に行ったのだ。
厠か?


あのような姿では
絡まれるのではないか?



急ぎ俺は席を立った。



部屋から出ると葉月屋の中を
歩き回る。


案の定、酔っぱらい二人に
和泉は廊下で絡まれている。


「離してってば!!」


ずるずると引きずられる和泉を
助けるべくと俺は歩みを早めた。


しかし。

「ねぇ君たち。
俺の女に何してるの?」

真っ黒い空気を漂わせた男が
俺より先に声をかけた。



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