Dead Love Children
「キレイだろ?」

 と飲み物を開けながら俺が言うと、

「うん、キレイ」

 とモモカはそう言った。

 ここは俺の特別な場所だった。

 なぜか知らないけど、夜になってからこの山の頂上で空を見上げると、信じられないくらいキレイな星空が見える。

 だからヒマな時、俺は一人でよくここに来ていた。

 本当は誰にも教えないつもりだったんだけど、今日はモモカのために特別な配慮をしたつもりだった。

 2人でしばらく空を見続けたあと、俺はシャツのスソをめくって、

「これ」

 と言ってわき腹をモモカに見せてみた。

 暗くてよく見えないみたいだったから、傷あとのある部分を指差し、

「ここに深い切り傷があるんだ。小学生の時オヤジにガラスで切りつけられた。うちのオヤジアル中でさ、酒を飲む度に俺とかオフクロに暴力を振るったんだ」

 と説明してみた。

 それを聞いてモモカは黙っているから、俺はさらに言葉を続けた。

「そういうイヤなことがある度に、俺はここに来てた。この星空見てるとなぜか元気になるからさ、モモカも何かあったらここに来るといいよ」

 そこまで言うとモモカは「うん」と頷いてから、

「ありがとう」

 と恥ずかしそうにそう言った。

 その仕草が可愛くて、俺は初めてモモカのことを異性として意識した。
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