花屋とパンジー
花屋さんside
俺は、チャニョル。
小さい頃からの夢を叶えて、花屋を営んでいる。
毎日花に囲まれていると、幸せな気分になる。友人に言うと、絶対メルヘンチックだとバカにされるから、これは俺だけの秘密。
俺には好きな人がいるんだ。
彼女は近くの大学に通っていて、この店の前を通る。
俺は、勇気を出して挨拶は出来るようになったんだ。たまに店も覗いてくれる。
そういえば、俺にはお気に入りの花がある。
窓際に飾ってある黄色いパンジーだ。
この綺麗な黄色がとっても気に入っている。
随分前に大量で仕入れて、店の外に飾ろうとしたとき、一個だけ植木鉢をひっくり返してしまったことがあったんだ。
大急ぎで土に戻したんだけど、暫く元気がなくて、毎日毎日陽に当てたり、肥料をあげたり、見てたら情がわいちゃって、売るに売れなくて店の中の陽の辺りのいい窓際に飾ってある。
ある日、俺は、決めたんだ。あの子に告白しようって。
『パンジーちゃん、俺頑張るわ。』
パンジーに俺の決意を聞いてもらって、自分を奮い立たせたんだ。
すると、ある日、店の外に目に眩しいほどの黄色のシャツをきた一人の少年が立っていたんだ。
『いらっしゃい。お花を買いにきたのかな?』
俺が尋ねると、恥ずかしそうに
「僕は花が大好きで・・・・・あのぅお花見ててもいいですか?」と答えた。
『いいよ。ゆっくり見てくれていいからね。聞きたいことがあったら何でも聞いてね。』
そばにいたら見にくいかなと、俺は、店の中に戻った。
少年は暫く一人で花を見ていたが、店の中に入ってきた。
それから暫くの間、俺と少年は談笑していた。
あの花は綺麗だけど匂いがきついよとか、この花は世話が大変なんだよとか・・・・・。
すると、その子が突然思い詰めたように話し出したんだ。
「っ僕は、チャニョルの事が大好き。いつもいつも大事に育ててくれてありがとう。そのお陰で僕、綺麗に咲くことが出来たよ。」
『・・ぇっ・・・・・・・?』
俺は気が動転してしまって、声にならない声を発してしまっていた。
彼の言ってることがよく理解できずにただ少年の言うことを聞いていた。
「・・・・僕は、・・・僕はベクっ。あの黄色いパンジーのベクだよ。チャニョルのこと大好き。ずっとこうやって話したかったんだ。やっと話す事が出来て僕嬉しい。んで、んで、チャニョル応援してる。きっと上手くいくから。頑張って。バイバイ。」
そう言うと、走り去って行ってしまった。
俺は、走り去る黄色い後ろ姿を店の入口にたってボッーと見ていた。
頭が働かなくて、初対面のはずなのに、あいつチャニョルって・・・・。何で俺の名前しってんだよ?
パンジーって・・・・?パンジーのベクだよって・・・・?
俺は、何だか狐に摘ままれたような気持ちのまま店の中に戻った。
でも俺は、まさかと思ったけど、いつもパンジーが飾ってある場所に目を移すと、朝は綺麗に咲いていたのにパンジーの花が散ってしまっていた。
『えっ何でっ?』
俺は植木鉢に駆け寄り、
そして落ちていた艶やかな黄色い花びらを拾った
『まさか・・・・・な。』
外はすっかり日も落ちて辺りに街灯の明かりが点り始め、俺は閉店の準備を始めた。
あれから俺には彼女が出来た。
あのとき大事に育てていたパンジーはもうないけど、今でもレジの横には、黄色いパンジーの栞が飾ってある。
~Fin~
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