春恋
真実
大雪が降って街が大渋滞
こんな時に限ってタクシーは捕まらない。
電車も帰宅ラッシュでもみくちゃ。
バス待ちなんて何時間すればいいのかわからないくらい長蛇の列
「本当に宜しいの?」
「平気です、まだ時間ありますから。」
高級車から、顔を出す叔母様は悲しそうだった。
「いえ、でも。」
子どもがいない彼女は少女を本当の娘のように可愛がっていた。
「叔母様、気にしないでください。急いで行かなきゃいけないんですから」
本来ならこれから高級レストランで食事をする予定だったのだが、彼女の会社からなにやら問題が起きたみたいで行かなきゃいけないらしい
「なら、車を寄越すわ喫茶店で暇を潰して頂戴」
「え、でも」
「黒、そういう事だから」
「畏まりました。」
黒と呼ばれた執事さんが丁寧に頭を下げて何処かへ連絡をしていた。
「叔母様、私なら歩いて…」
「だめよ。こんな寒い中歩きなんて
旬から怒られちゃうわ。」
「は、はぁ、」
フフフ、と小さく笑う叔母
彼女はどう反応していいのかわからなかった。
すると、電話をしていただろう執事さんが戻ってきて少女の横に来た
「お嬢様。そちらの***ホテルでしたらラウンジが御座います。あちらでしたら安全かと」
「そうね、めぐちゃんあちらで待っててもらえるかしら?」
「はい、」
林愛美
16歳、来週から新しい高校に転入することになった。
新しい街はとても都会的、お金持ちがたくさん住む有名な場所に来た愛美は色んなことに驚いていた。
執事が当たり前とか、
家がすごく広いとか、
お食事はコックさんがいてなんでも好きな時に好きなものを食べれるとか。
今までに経験したことがなかった
叔母が気を使い、黒崎さんをこの場に残していってくれた。
黒と呼ばれた執事さんは黒崎さん。
優しくてかっこよくて、背が高い。
こんな人と一緒に歩いて良いのかな?と愛美はぼんやり考えていた。
「愛美様?」
雪の中、先を歩く黒崎がゆっくり振り向いた
「は、はい!」
「迷子になります。さぁ、行きましょう。」
スマートにエスコートする黒崎さんに少しドキッとした。
「わ、私、16ですよ?迷子はさすがに……」
「お嬢様も同じようなことをおっしゃいました。そして1分20秒後、迷子になられました。」
クスクスと楽しそうに笑う黒崎に愛美はポカンとした顔になった。
「懐かしいですね、こんな雪の降る日でしたから。」
黒崎と叔母の絆の強さだろうか、こうして叔母の話をする黒崎はいつも以上に優しく見えた。