春恋
香織は愛美よりも3つ上、高卒で西園寺家に就職したが本家で使えない。と判断されてこちらに飛ばされたらしい。
着替えをしながら彼女の愚痴に付き合わされた。
「で、私にお茶かぶせてきてー、もう、熱いのなんのって「香織さん、ちょっといい?」
「はい?ってか、香織でいーですよ。どうせ使用人ですから」
「いや、それは悪いからさん付けさせてもらいます。」
「…………めぐめぐって変わってるね。ま、いいや。」
彼女はてきぱきとベッドメイキングをしていく。
長年続けてますから、と愚痴の中でも言っていた通りものすごい早さで綺麗になっていく。
「香織さんは、私の父のこと知ってますか………?」
「あー、しん様?」
「し、しん様?」
「しん様は、君より少し小さな娘がいるんだって嬉しそうに笑ってました。」
「え?」
「日に日に綺麗になっているんだよーって、早く迎に行きたいなぁって」
「ちょっ、ちょっと待って!」
意味がわからない!と慌てて首を振る愛美
それを見た香織はふぅ、とため息ついた。
「無理しないで、だって美鈴様からは死んだってきかされていた。って言われたのよね。じゃあ、知る筈ないってなるけど、真実は違うよ。」
愛美の弱々しい瞳に香織は真っ直ぐに伝えた
「しん様の最後は私が看取りました。
延命治療を拒んだのはしん様の意思です。
めぐめぐのことを誰よりも愛し、幸せを願っていたんです。
私にしん様はこう言いました。
愛美を頼む。
私は愛美様のメイドです、これから何かありましたら私に申し付け下さい。」
朝食はダイニングにあります、ニッコリ微
んだ香織
「聞いていい?」
「はい、」
「父の部屋は…………?」
父親の部屋には鍵がかかっていた。
香織が、「これは、めぐめぐが使ってください」と手渡した鍵
緊張しながらあけると、薄暗い部屋だった
部屋の電気をつけるとベットと机しかないさみしい部屋だった。
「なにもないのね、」
可愛い娘だよと言った割には、写真立て一つない。
期待しただけ無駄だった
「馬鹿みたい、」
小さな窓にうつる自分の顔があまりにも情けなくて苦笑いした。
「…………流石、あの女の娘だな」
「え?」
「その肌の色、髪、全て似てる。憎いくらいに」
「あ、あの。」
「挨拶もまともにできないのか、期待はしてないけどな。
ところで、いつまでこの家に居座る気だ。
他人のくせに生意気な。お前みたいな女、メイドでも雇いたくないわ」